夏休みに入ると、読書感想文がなかなか進まない子をよく見かけます。原因の多くは「書けない」ではなく「そもそも読む本が決まらない」ことです。図書館で背表紙をながめても、どれを選べばいいか分からず帰ってくる。そんな子には、本選びの相談相手としてAIを使うのが思いのほか効きます。
ただし一つだけ、絶対に外せない注意があります。ChatGPTやGeminiは、実在しない本のタイトルを堂々とすすめてくることがあるのです。あらすじや著者名まで添えて、いかにも名作のように語るので、そのまま図書館へ探しに行って空振りする親子が後を絶ちません。
先に結論をお伝えします。AIには「本選びの相談」だけをまかせ、出てきた本は必ず実在するかを確かめてから探しに行く。そして読むことと感想を書くことは子ども本人がやる。この三つを守れば、AIは頼れる本選びの相棒になります。
結論 本選びはAI実在確認は親感想は子ども
役割を最初に分けておくと迷いません。
本選びの相談はAIにまかせます。子どもの好きなものや読書のレベルを伝えれば、候補をいくつも出してくれます。ここはAIが得意な部分です。
出てきた本が本当に存在するかの確認は、親がやります。後で詳しく説明しますが、国立国会図書館サーチや図書館の検索で一分ほどあれば済みます。ここを飛ばすと架空の本を探しに行く羽目になります。
そして本を読むことと、感想文を書くことは子ども本人がやります。AIに感想文そのものを書かせて提出するのは、学びの機会をうばううえ、学校でも問題になりやすいラインです。本選びだけAIに頼り、中身は子どもの体験に任せる。この線引きが全体の土台になります。
子どもの興味を起点にAIへ提案させる聞き方
本が決まらない子に「何が読みたい?」と聞いても「分からない」しか返ってこないものです。そこでAIには、本のジャンルではなく子どもの興味そのものを伝えます。
たとえば恐竜が好きな小学4年生なら、こう頼みます。
「小学4年生が読書感想文に使える本を選びたいです。その子は恐竜が大好きで、図鑑はよく読みますが物語はあまり読みません。感想文が書きやすそうな、恐竜や生き物が出てくる物語を5冊、それぞれ50字くらいのあらすじと、どんな子に向くかを添えて教えてください。」
ポイントは三つあります。学年(読める難しさの目安)、好きなもの(恐竜)、そして読書のクセ(図鑑は読むが物語は苦手)を具体的に書くことです。この三点がそろうと、AIの提案がぐっと子どもに近づきます。「感想文が書きやすそうな」と一言入れておくと、ただ難しい名作ではなく、心が動きやすい本を選んでくれます。
候補が出たら、子どもと一緒に画面を見ながら絞り込みます。「このうち、どれが気になる?」と本人に選ばせるのが大事です。親が決めた本より、自分で選んだ本のほうが最後まで読みきれます。気になる本が見つかったら、「その本のどこが感想文を書きやすいと思う?」とAIに重ねて聞くと、読む前の手がかりにもなります。

AIが挙げる本は実在を必ず確かめる
ここが今回いちばん伝えたいところです。生成AIは、実在しない本を平気ですすめます。
これは大げさな話ではありません。ある教育サイトでChatGPTに本を推薦させた検証では、実在する歴史家エドワード・ギボンの『ローマ史』、ピーター・ヘザーの『ローマ帝国』といったタイトルがすすめられましたが、調べてみるとどれも存在しない本だったと報告されています。著者は実在するのに、その人が書いていない架空のタイトルを、もっともらしく挙げてくるのです。
なぜこんなことが起きるのか。生成AIは事実を覚えているのではなく、「次に来そうな言葉」を確率でつないで文章を作っています。著者名のあとに自然につながりそうな書名をそれらしく生成するため、実在を確かめないまま出力してしまう。これがハルシネーションと呼ばれる現象です。子ども向けの本でも同じことが起こります。
だから親の仕事は、AIが挙げた本を一冊ずつ確かめることです。確認は次の順でやると確実です。
まず国立国会図書館サーチ(NDLサーチ)で書名や著者名を検索します。日本で出版された本は「全国書誌データ」に登録されるため、ここで出てこない本はまず疑ってかかるべきです。仮に本のISBN(裏表紙のバーコードの数字)が分かれば、それで検索するのが一番確実です。
次に、版元の公式サイトを確認します。出版社の名前でその本のページが見つかれば、まず実在します。最後に、近所の図書館の蔵書検索(OPAC)や書店サイトで在庫を調べれば、実際に手に取れるかまで分かります。
手間に感じるかもしれませんが、一冊あたり一分ほどです。架空の本を探して図書館を歩き回る時間に比べれば、はるかに早く済みます。AIの推薦は「候補リスト」であって「正解リスト」ではない、と心得ておくと安全です。

読むのと感想は子ども本人にまかせる
本が決まり、実在も確認できたら、ここからはAIの出番ではありません。
読書感想文をAIに書かせて提出するのは避けましょう。文章のうまさは見抜かれますし、何より子ども自身が本と向き合って心が動く、いちばん大事な時間がなくなってしまいます。学校によっては提出物でのAI利用にルールを設けている場合もあるので、心配なら担任の先生の方針を確認しておくと安心です。
では親はどう関わるか。読み終わったあとに「いちばん心に残った場面はどこ?」「主人公のどんなところが好き?」と話を聞いてあげるだけで十分です。子どもが言葉に詰まったら、その会話のメモが感想文の下書きになります。どうしても書き出せないときだけ、「この本の感想文では、どんなことを書くと書きやすい?」と書き方のヒントをAIに聞くのは構いません。ただし出てきた文章をそのまま写すのではなく、子どもが自分の言葉に直すことを必ず約束しておきます。
本選びはAI、確認は親、読書と感想は子ども本人。この役割分担さえ守れば、AIは夏休みの読書を遠ざけるどころか、本嫌いの子を本へ近づける入り口になってくれます。
よくある質問
Q. AIがすすめてくれた本が、図書館で見つかりません。
A. その本が実在しない可能性があります。生成AIは実在しない書名を挙げることがあるため、まず国立国会図書館サーチ(ndlsearch.ndl.go.jp)で書名や著者を検索してみてください。そこにもなければ架空の本と考えてよく、別の候補に切り替えるのが早道です。
Q. AIに読書感想文を書かせて提出してもいいですか?
A. おすすめしません。読むことと感想を書くことは子ども本人の学びの中心です。学校によってはAI利用にルールがある場合もあるため、先生に確認しておくと安心です。AIは本選びの相談と、書き方のヒントをもらう程度にとどめ、文章は子どもが自分の言葉で書きましょう。
Q. 本選びを相談するとき、AIに何を伝えればいいですか?
A. 学年、子どもの好きなもの、ふだんの読書のクセ(よく読む本・苦手な本)の三つを具体的に伝えると、提案が子どもに合いやすくなります。「感想文が書きやすそうな本を5冊、短いあらすじ付きで」と頼むと選びやすい候補が並びます。出てきた本は実在を確かめてから探しに行ってください。